高精度放射線
治療センター

センターの紹介
高精度放射線治療センターを開設
当院では平成10年に放射線治療装置としてリニアックを導入し、当初から通常の放射線治療とともに高精度放射線治療として脳の定位放射線治療を行い、さらには体幹部(肺・ 肝臓)の定位放射線治療と長年取り組んできました。
このたび、地域がん診療連携拠点病院として更に放射線治療の能力を高めるため、最新鋭の高精度放射線治療システムを備えたセンターを開設しました。
これにより多摩地区有数の放射線治療能力を持つ病院になり、手術・化学療法を含むがん治療のさらなる発展を目指していきます。
放射線治療の特徴
臓器を温存しながら病巣を消滅させることが可能なことです。
近年の放射線治療技術の進歩により、病巣に限局した照射を行うことができ、正常組織の障害を最小限にすることができるようになりました。その結果、治療効果も向上し、放射線治療の適応疾患が大幅に増加しました。
また、高齢者や合併症のある患者さんでも放射線治療を受けることができます。
コンピュータ技術の進歩と相まって、高精度な治療として不整形で複雑な形の腫瘍に対し、腫瘍の形に合わせて放射線を照射することで線量を集中させ、周囲の正常組織の線量を抑える強度変調放射線治療(IMRT)という照射法が可能になってきました。
スタッフ紹介
高精度な治療をはじめとした日々の放射線治療を行っていくため様々な専門職種が関わっており、当院では1名の放射線治療専門医、認定機構の資格を有する2名の医学物理士、3名の放射線治療専門放射線技師をはじめとした12名の放射線技師(女性技師4名)、専従看護師としてがん放射線療法看護認定看護師、受付といった職種のチームワークでより質の高い治療、安全で安心な治療を心がけています。
高精度放射線治療センター部長:星 章彦(ほし あきひこ)

専門領域
- 放射線治療
資格等
- 放射線治療専門医
- 日本がん治療認定医機構認定医
- 東京医科歯科大学医学部臨床教授
- 第一種放射線取扱主任者
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
平成10年当院にリニアックが導入された際に着任し、放射線科の業務の中でも専ら放射線治療に携わっています。当時から脳の定位放射線治療に積極的に取り組んできましたが、最近では肺など体幹部の定位放射線治療も行っています。高精度の治療が中心となっており、この10年で総件数も倍増していますが、悪性腫瘍が中心となりますので患者さんが安心して治療に取り組めるよう、きめ細かく丁寧な治療を速やかに進めていくべく日々の診療にあたっています。
可能な検査・治療・器械について
がんの主な治療法は手術・化学療法・放射線療法です。放射線治療は主にがんなどの悪性腫瘍を対象とした治療方法です。
定位放射線治療
小さな病巣に対し3次元的に様々な方向からピンポイントで照射する方法で、いわゆるピンポイント照射といわれる治療法です。1回の治療で終了するSRS(stereotactic radiosurgery)と数回に分けて1〜2週間で治療するSRT(stereotactic radiotherapy)があり、大きさや部位、数によって治療法が選択されます。脳では主に3cm以下の病巣が対象となり、今までは金属フレームをピンで頭蓋骨に固定し照射していましたが、ノバリスTxでは着脱式の樹脂性マスクでも安定した固定が得られ正確な照射ができ侵襲のない治療が行えます。肺や肝臓では5cm以下の腫瘍が対象となり体幹部を固定する非侵襲的な固定具を用いて治療を行います。1回の照射で通常の放射線治療の数倍〜10倍以上の高線量で治療するため高い局所効果が得られる一方周囲正常組織の線量は低く抑えられるため副作用も少ない治療が行えます。

強度変調放射線治療(IMRT)
従来の放射線治療ではいくつかの方向からの放射線を組み合わせてもそれぞれのビームが均一なため、腫瘍が正常組織を取り囲むような形で存在すると正常組織にも同じ線量が照射されてしまいました。近年高度なコンピュータ制御によりビーム内の放射線強度を変化させることで凹型の線量分布を作ることができるようになり、不整形の腫瘍でもその形に合わせ高線量を照射し、なおかつ近接する正常組織の線量を減らすことが可能になりました。重要臓器が近接する様々な形の固形腫瘍がこの治療の対象とはなりますが、主に前立腺内にとどまっている前立腺癌に対し直腸出血のリスクを下げながら線量を上げ治療効果を高めるとか、頭頸部癌で唾液腺障害を軽減させながら治療効果を高めるといった治療が行われています。治療の回数は従来の通常の放射線治療と同様に30回前後、2か月弱の期間かかることが多いです。

高精度放射線治療装置「ノバリスTx」
ノバリスTxは2.5mmのマイクロマルチリーフコリメータという細かな絞りによって、正確に腫瘍の形状にフィットした治療が行えます。ExacTracというkVのX線撮影システムを使い、撮影されたX線画像をコンピュータ処理することで短時間に1mm程度の微妙な誤差もキャッチでき、6軸制御のロボティックカウチという寝台で位置誤差のわずかなずれを自動補正し、高速かつ高精度な位置決めが行えます。治療装置に備え付けられているOn-Board Imager(OBI)によるコーンビームCT、Portal Vision、赤外線ナビゲーションカメラといった様々な画像誘導システムも備わっており、短時間でサブミリ単位のIGRTが行える治療装置です。

治療実績
2008年度 | 2009年度 | 2010年度 | 2011年度 | 2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | |
新規患者数 | 416 | 463 | 403 | 353 | 338 | 377 | 386 | 369 | 410 | 460 | 434 |
総件数 | 7,838 | 9,308 | 8,451 | 8,171 | 7,916 | 8,591 | 8,484 | 8,347 | 9,201 | 9,611 | 9,348 |
脳定位放射線治療件数 | 26 | 33 | 39 | 27 | 21 | 18 | 24 | 40 | 43 | 43 | 50 |
体幹部定位放射線治療件数 | 23 | 51 | 17 | 35 | 31 | 23 | 20 | 17 | 20 | 34 | 28 |
強度変調放射線治療 | 10 | 24 | 44 | 56 | 54 |