日本赤十字社 武蔵野赤十字病院

高精度放射線治療センター高精度放射線
治療センター

センターの紹介

高精度放射線治療センターを開設

当センターでは手術・化学療法を含むがん治療のさらなる発展を目指し、院内他科と協力しながら積極的に放射線治療を行っています。
1998年にリニアックを導入した当初から通常の放射線治療とともに脳の定位放射線治療を開始し、さらには体幹部(肺・肝臓)の定位放射線治療も行うようになり高精度放射線治療に長年取り組んできました。2014年には地域がん診療連携拠点病院として更に放射線治療の能力を高めるため、Novalis TxⓇ(ノバリスTx)を始めとした最新鋭の高精度放射線治療システムを備えた高精度放射線治療センターを開設しました。リニアック2台体制になるとともに強度変調放射線治療(IMRT)も開始し、多摩地区有数の放射線治療能力をもつ病院となりました。

放射線治療の特徴

放射線治療の大きな特徴は、臓器の機能や形態を温存しながらがん病巣を治療できることです。近年の放射線治療技術の進歩によって病巣に限局した照射が可能となり、正常組織の障害を最小限に抑えられます。また、病巣の場所や大きさ、患者さんの状態に合わせて照射の内容を調整できるため、高齢者や合併症のある患者さんでも安全に治療を受けていただけます。
当センターでは脳・肺・肝臓に対する定位放射線治療(いわゆるピンポイント照射)や強度変調放射線治療(IMRT)などの高精度放射線治療を行っていて、通常の放射線治療よりも副作用を抑えることが可能です。また、残念ながら根治がむずかしい転移・再発のがん患者さんに対しても、痛みや出血を抑えるための緩和照射で生活の質を保つお手伝いができます。
治療の内容や回数は患者さんによって異なりますが、通常はX線(レントゲン線)を1日1回、週5回(平日毎日)のペースで照射し、全体では数回~30数回を1-数週間かけて治療します。1回の所要時間は10-15分程度、高精度放射線治療でも20-40分程度で、痛みや熱さは感じません。多くの患者さんが通院で治療を受けられます。


スタッフ紹介

高精度放射線治療をはじめとした日々の放射線治療を行っていくため様々な専門職種が関わっています。当センターでは3名の医師(うち2名は放射線治療専門医)、認定機構の資格を有する2名の医学物理士、3名の放射線治療品質管理士および3名の放射線治療専門放射線技師をはじめとした12名の放射線技師(女性技師4名)、専従看護師、受付といった多職種のチームワークでより質の高い治療、安全で安心な治療を心がけています。

部長:戸田 一真(とだ かずま)

可能な検査・治療・器械について

定位放射線治療

定位放射線治療は、小さな病巣に対して精確な位置合わせを行ってから3次元的に様々な方向から照射する方法で、ピンポイント照射ともいわれる治療法です。1回の照射で通常の放射線治療の数倍〜10倍以上の高線量を照射するため高い局所効果が得られる一方、周囲正常組織の線量は低く抑えられて副作用を軽減できます。通常より回数が少ないのも特徴で、1回の治療で終了するSRS(stereotactic radiosurgery)と数回に分けて1〜2週間で治療するSRT(stereotactic radiotherapy)とがあり、病巣の大きさや場所、数によって使い分けます。
脳では主に3cm以下の脳転移が対象となります。以前は金属フレームをピンで頭蓋骨に固定し照射していましたが、現在は着脱式の樹脂性マスクで痛み無く治療が可能です。
肺や肝臓など体幹部への定位放射線治療はSBRT(stereotactic body radiotherapy)と呼ばれ、5cm以下の病巣が対象となります。体を固定する非侵襲的な固定具や呼吸性移動対策を併用して4-8回ほどに分けて照射します。早期肺がんに対するSBRTは手術とほぼ同等の治療効果を発揮します。

強度変調放射線治療(IMRT)

2014年から強度変調放射線治療(IMRT)を開始しました。現在はより短時間で照射できるVMAT(回転強度変調放射線治療)を行っています。
従来の放射線治療でも正常組織がなるべく照射されないようにいろいろと工夫した照射を行ってきましたが、腫瘍が正常組織を取り囲むような形で存在するとどうしても正常組織にも同じ線量が照射されてしまいます。IMRTは、ビーム内の放射線強度を変化させることで腫瘍の形に合わせた高線量を照射しつつ、近接する正常組織の線量を軽減できる照射法です。
様々な部位や臓器のがんがIMRTの対象となり得ますが、主には転移の無い前立腺がん・頭頸部がんに行っています。前立腺がんでは直腸出血など、頭頸部がんでは唾液腺障害などの副作用を軽減させつつ治療効果を高めることができます。治療の回数や期間は従来の放射線治療と大きく変わらず、20~30数回程度を1~2か月弱かけて照射することが多いです。

高精度放射線治療装置「ノバリスTx」

Novalis TxⓇ(ノバリスTxは高精度放射線治療に特化した装置で、2.5mmのマイクロマルチリーフコリメータによって正確に腫瘍の形状にフィットした治療が行えること、ExacTracⓇという高速かつ高精度な画像誘導放射線治療(IGRT)システムを有することが大きな特徴です。ExacTracⓇは撮影されたX線画像を高速にコンピュータ処理して1mm以下のわずかな誤差も把握し、6軸制御の寝台で短時間かつ半自動的に照射位置を補正します。他にOn-Board Imager(OBI)によるコーンビームCT、Portal Vision、赤外線ナビゲーションカメラといった様々な画像誘導システムも備え、精確な位置合わせが行えます。

治療実績

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
新規患者数(紹介患者数) 526 594 625 657 688
総件数 9,348 10,254 9,749 10,107 10,384
脳定位放射線治療(SRS/SRT) 50 44 51 41 49
体幹部定位放射線治療(SBRT) 28 35 24 32 67
強度変調放射線治療(IMRT) 54 80 77 73 115
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