泌尿器科
診療科の紹介
現代の医療は、院内・院外を問わず、多職種によるチーム医療、地域完結型治療が主流です。私たちは、この地域で高度急性期医療を担う武蔵野赤十字病院の一員として、院内外の各専門職と協同して急性期かつ高度な医療の中にも、丁寧な診療を提供させていただくことを目標としています。
そのためにはお一人お一人の診察に時間をかける必要があり、外来診療は完全紹介予約制とさせていただいております。
診断がついたらご自分に最も適った治療法を一緒に決めてまいりましょう。 他の施設をご紹介することもございます。 セカンド・オピニオンも行っております。
入院が決まりましたら治療の説明書以外に入院中の経過を表にした書類 (クリニカルパス) をお渡しします。 ご入院の前にゆっくりとお読みいただき、入院の際にお持ち下さい。
当科では、腎臓がんには腹腔鏡もしくは部分切除といった低侵襲治療を積極的におこなっています。また、前立腺がんの根治手術は、 ロボット支援システムを導入し、2019年5月より開始しました。早期の尿禁制及び勃起機能温存に力を入れており、9日間と短期間の入院です。
そのほか、緩和ケアチームによる緩和ケア、痛みの治療、管理栄養士による栄養指導、連携室による退院支援、在宅療養の相談など多くの職種との協同によるトータルな診療を行います。
急性期の治療 (手術など入院を必要とする治療) がお済みになり、症状が落ち着かれましたら、かかりつけの先生もしくは泌尿器科専門医に継続治療をお願いしております。 病状に変化が現れたり、詳しい検査や入院が必要になった時には再び当科で診察・治療をいたします。
このような地域完結型の治療 (地域医療連携といいます) を行うには他の病院やクリニックの先生方とのチームワークが必要不可欠です。 特に前立腺がんについては2009年から東京都医療連携手帳を用いた共同診療を約900名の患者さんに行っております。
認定施設
- 日本泌尿器科学会専門医教育施設
初診の方は、おかかりの医療機関の紹介状と受診日の事前予約が必要となります。
「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)などの遺伝性腫瘍についてご相談を希望される方は遺伝外来へ」スタッフ紹介
常勤医師数
4名
部長:田中 良典 (たなか よしのり)

専門領域
- 泌尿器悪性腫瘍
資格等
- 日本泌尿器科学会指導医・専門医
- 日本癌学会
- 日本癌治療学会
- 日本泌尿器内視鏡学会
- 日本クリニカルパス学会理事・パス指導医
- 日本医療マネジメント学会東京支部幹事
- 東京大学医学部非常勤講師
- 緩和ケアの基本教育に関する指導者研修会修了
- 泌尿器科ダヴィンチ支援手術プログラムライセンス取得
- NPO在宅医療・緩和ケアカンファレンス副理事長
著書
- クリニカルパス概論 ―基礎から学ぶ教科書として (サイエンティスト社2015)
- 前立腺癌と男性骨粗鬆症 骨管理マニュアル (医学図書出版 2015)
- 基礎から学ぶクリニカルパス実践テキスト (医学書院 2012)
- がん救急マニュアル (メディカルビュー 2011)
- がん地域連携クリティカルパス (じほう 2010)
当院は数年前から多摩地区のがん診療の拠点病院として実績を挙げてきました。 泌尿器科で入院治療を受ける方は半数以上ががんの方です。私どもが1年間に行なう手術件数も数年前の280件から500件に増えています。 この間の治療方法の進歩や多様化に対応するためには、無駄と無理のない医療サービスを提供させていただくことと、地域内での連携、地域を越えた連携を推進することが必要不可欠です。 このために院内外で日夜奮闘しています。
副部長:山田 幸央(やまだ ゆきお)
専門領域
- 泌尿器がん
- ロボット手術
- 腹腔鏡手術
- 排尿障害
資格等
- 日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医・指導医
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- 日本排尿機能学会専門医
- 泌尿器腹腔鏡技術認定医
- 泌尿器ロボット支援手術プロクター
- da Vinci Xi Modules for Surgeons修了
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
医師:森 洋一(もり よういち)
専門領域
- 泌尿器科
資格等
- 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医
- 日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
医師:藤 隼人(とう はやと)
専門領域
- 泌尿器科全般
資格等
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
医師:安立 夢(あだち ゆめ)
専門領域
- 泌尿器科
資格等
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
可能な検査・治療・器械について
検査
- 内視鏡 (軟性ファイバースコープによる膀胱・尿道鏡) 、経直腸超音波、腹部超音波、尿流測定・残尿測定、各種尿路レントゲン検査
- 前立腺MRI検査:針生検の適応を決めるために放射線科と協同で2016年秋から導入しました。診断精度が向上し、無用な針生検を避けることができるようになりました (生検陽性率は約80%) 。
- 前立腺針生検:外来での局所麻酔下検査、1泊2日入院での腰椎麻酔下検査の二通りをお選びいただけます。
主な治療
尿路悪性腫瘍
- 膀胱がん:内視鏡切除、膀胱全摘除 (腸管利用尿路再建) 、BCG膀胱内注入、全身化学療法、免疫チェックポイント阻害薬治療
- 腎盂・尿管がん:腹腔鏡下手術、全身化学療法、免疫チェックポイント阻害薬治療
- 腎がん:腹腔鏡下手術、腎部分切除、分子標的薬治療、免疫チェックポイント阻害薬治療
- 前立腺がん:ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術、放射線療法 (強度変調治療 IMRT) 、内分泌療法 (外来治療) およびこれらの併用、PSA監視療法、全身化学療法、新規ホルモン療法
※小線源治療は行っておりません。他院を紹介いたします。 - 精巣腫瘍:全身化学療法や放射線療法と手術の併用による集学的治療
尿路結石
- 内視鏡による砕石術 (レーザー) 2泊3日または3泊4日
※体外衝撃波結石破砕術 (ESWL) は行っていません。
男性の排尿障害 (前立腺肥大)
- 内視鏡切除
※レーザー治療は行っておりません。他院をご紹介いたします。
神経因性膀胱
- 自己導尿による排尿管理
急性感染症
- 腎盂腎炎、精巣上体炎、前立腺炎
救急疾患
- 外傷、精索捻転、尿路結石
血尿の精密検査
- 各種検診、人間ドックで指摘される血尿
器械
- 電子内視鏡 (膀胱鏡、尿道鏡、尿管鏡) 、経直腸超音波断層装置、腹部超音波断層装置、尿流量率測定装置
- HO-YAGレーザー (内視鏡下結石破砕装置)
- da Vinci Xi (ロボット支援腹腔鏡下手術システム)
診療実績
2011年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | ||
副腎腫瘍 | 副腎摘除 | - | 2 | 2 | 1 | 8 | 4 | 6 | 5 | 2 |
(腹腔鏡下手術) | 0 | 0 | 0 | 0 | -4 | -5 | -5 | -2 | ||
腎がん | 根治的腎摘除術 | 29 | 20 | 15 | 12 | 18 | 18 | 15 | 17 | 17 |
(腹腔鏡下手術) | -3 | -5 | -2 | -7 | -7 | -6 | -6 | -4 | ||
腎部分切除術 | 5 | 5 | 8 | 4 | 9 | 7 | 6 | 2 | 4 | |
腎盂尿管がん | 腎尿管全摘除術 | 14 | 11 | 14 | 12 | 12 | 10 | 15 | 6 | 16 |
(腹腔鏡下手術) | -1 | -2 | -9 | -9 | -7 | -6 | -4 | -10 | ||
膀胱がん | 経尿道的切除術 | 114 | 127 | 122 | 141 | 154 | 126 | 133 | 157 | 139 |
膀胱全摘除術 | 14 | 12 | 14 | 5 | 9 | 14 | 12 | 16 | 11 | |
前立腺がん | 前立腺全摘除術 | 50 | 33 | 38 | 27 | 24 | 28 | 26 | 22 | 31 |
(ロボット支援手術) | - | - | - | - | - | - | - | - | -24 | |
去勢術 | 27 | 16 | 19 | 10 | 8 | 11 | 7 | 4 | 2 | |
前立腺生検 | 270 | 196 | 211 | 171 | 195 | 160 | 166 | 188 | 158 | |
前立腺肥大症 | 経尿道的切除術 | 40 | 30 | 20 | 22 | 17 | 18 | 14 | 6 | 4 |
精巣腫瘍 | 高位精巣摘除術 | 11 | 12 | 12 | 14 | 11 | 16 | 5 | 8 | 10 |
尿路結石 | 経尿道的砕石術 | 65 | 69 | 58 | 62 | 45 | 52 | 59 | 58 | 43 |
臨床指標
全退院患者数 | 全退院数における7日以内の緊急再入院数 (率) | ||
2019年度 | 612 | 10 | 1.6% |
解説
私たちがめざす「多職種によるチーム医療」は、うまく機能すれば患者さんが早く回復し、早期の退院に結び付くはずです。一方で、昨今は低侵襲や効率化を謳うあまり、性急な退院となる傾向があることも否めません。無理な退院には必ず無理が生じます。
そこで私たちの提供させていただいている入院診療の妥当性を検証するため、すべての入院患者さんを対象として7日間以内の緊急再入院率を臨床指標として採用しました。
2019年度は、平均在院日数が7.3日から7.2日にわずかに短縮したなかで、10名 (1.6%) の方が該当しました。昨年度と同じでした。内訳を見てみますと、がん化学療法中の副作用 (好中球減少、血小板減少、貧血) が6名、術後や抗菌剤治療後の発熱が2名、血尿と緊急手術が必要な症状が1名で、昨年の内訳、がん化学療法中の副作用 (好中球減少、血小板減少、貧血) 6名、術後や抗菌剤治療後の発熱2名、終末期3名と比較してもほぼ同じ内容でした。
私たちのチーム医療が適切に行われていれば、緊急再入院は限りなくゼロに近づくはずです。化学療法の副作用や、発熱の方の緊急再入院はゼロを目指すべきと考え、引き続き努力を続けて参ります。